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フィレンツェの最後の晩餐 その5 (再掲2008-01-16 23:38の記事) [1400年代 Quattrocento]


(ただいま再開準備中の「美術史ノート」。とりあえず旧い記事の切れているリンクを修復するなどして再掲載しています)

 

「初詣に行けなかった王子稲荷の代わりに巡礼している」と始めた「フィレンツェの最後の晩餐」シリーズ。
「その4」で中断していましたが続編です。でも、その前に…

 

「街猫2号」発見!! 立派な尻尾が印象的。田舎では見かけないタイプです。

 

無言で見送る街猫1号。

 

以上、サービスカットでした。

ここから「フィレンツェの最後の晩餐 その5」です。

フィレンツェのオニサンティ広場。

 


中央の白い建物がオニサンテイ教会、新しい我が家から徒歩数分、2番目に近い教会です。ファサードはマッテーオ・ニジェッティ※1の作(1637-38)。フィレンツェでは比較的珍しいバロック様式の教会ですが建築当初からフィレンツェ人には悪評だったそうです。独創的な面白いデザインなのですが。

※1 マッテーオ・ニジェッティMatteo Nigetti(1560?70?-1648);ブオンタレンティ※2の弟子。後期マニエリズモから初期バロックの建築家。代表作にサン・ガエターノ教会など。

※2 ブオンタレンティBernardo Buontalenti(1536-1608)については以下の記事も参照

「ピッティ宮の休日」

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-02-19


右端の建物はイタリアで最も高級なホテルの一つ、エクセルシオール。The Westin Excelsior Florence
左端はレンツィ・クアラテジ宮(15世紀、1887年に改装)。

レンツィ・クアラテジ宮…というより現在はフランス文化会館※3として知られています。
美しいズグラッフィート※4で飾られています。

 

※3 Istituto Francese di Firenze

http://www.france-italia.it/index.php?lingua=it&menu=3&citta=Firenze

 

同じ写真の部分です。ズグラッフィート※4は〈重ね塗りした着色漆喰の上層を削り落とし下地の漆喰を出して模様を描く〉壁画技法で、特に外壁に適しています。

 

※4 ズグラッフィートsgraffitoについては以下の記事も参照

「アルノルフォ」

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-08-06

 


オニサンティ広場周辺のご紹介を続けます。
エクセルシオールの左側に見えている細長い建物はラ・カーサ・ガッレーリア・ヴィーキ。

 

 

ラ・カーサ・ガッレーリア・ヴィーキLa Casa-Galleria Vichi。

http://it.wikipedia.org/wiki/Casa-galleria_Vichi

リバティ様式※5を代表する建築家ジョヴァンニ・ミケラッツィ(Giovanni Michelazzi 1879-1920)の作品(1911年)。施主はアルジア・マリナイ・ヴィーキArgia Marinai Vichi。Borgo Ognissanti 58/r

 

※5 リバティ様式=イタリア版アール・ヌーヴォー=とミケラッツィの他の作品については「オステリア・ココトリッポーネ」の記事中でも紹介しています。

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-09-01

2階と3階の間のペディメント※6を切断して突き合わせたモティーフは、ブオンタレンティのマニエリズモ建築からの引用。

※6 ペディメント;pediment イタリア語ではfrontone 切妻屋根の正面の三角形の部分。破風(はふ)。ルネサンス建築では窓の上の庇のモチーフとして三角形とかまぼこ型を交互に並べることが多い。

frontone01.jpg

切断したかまぼこ型ペディメントを突き合わせたモティーフの例
 commons.wikimedia.org

 

前置きが長くなっていますが、いよいよ5番目の「最後の晩餐」参拝です。

教会正面の扉の左に「最後の晩餐」の部屋に続く入口があります。その左はカラビニエーリ(憲兵本部)の入口、間違って入らないように!

 

入口を入るとすぐ壁画で飾られた回廊です

 


その壁画の一部

 

回廊を抜けて明るい中庭へ。
「最後の晩餐」の部屋は奥、左の入口。

 

 

奥に「最後の晩餐」、左右の壁にはシノピア※7が展示してあります。

 

※7 シノピアsinopia:「シノピア」は褐色の顔料。その顔料で描かれたフレスコ画の下層の下絵も「シノピア」と呼ばれます。修復のため上層のフレスコ画を剥がした後に現れたものです。

 

 Domenico Ghirlandaio Cenacolo di Ognissanti

ギルランダイオ(1449-94)「最後の晩餐」(1480) 400 x 880 cm フレスコ

 

画面の左側。誰がユダ?

 



 

右側。テーブルの手前に孤立しているのがユダです。分かりやすい配置。

 

 

中央部分。

 

17年後に完成するレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に比べると、ぎこちなさは否めないかも知れません。
しかし真摯な人間ドラマが確かに存在するように思えます。

 

こちらはシノピア。画面左側の下絵です。

写真では分かり難いのですが誠実な線の描写が見事です。
 
こちらはファサード正面の扉から入る本堂の内部。


左右の壁に2つの有名なフレスコ画があります。

左側のギルランダイオ作「書斎の聖ヒエロニムス」(1480)
184 x 119 cm フレスコ画

ちなみにヒエロニムスHieronymusのイタリア語名はジローラモGirolamo。アパッチ族の酋長ジェロニモGeronimoも同じ。

 

 

右側はボッティチェッリの「聖アウグスティヌス」(1480)
152 x 112 cm フレスコ画
Sandro Botticelli(1445-1510)
Sant’Agostino



アウグスティヌスAugustinusは三位一体を定式化したことで知られています。4-5世紀の聖人ですが著書「告白」は1000年後のルネサンスの時代にもさかんに読まれ、ペトラルカなどにも大きな影響を与えています。

 

当時フィレンツェ随一の人気画家だったギルランダイオは、サン・マルコ修道院にも「最後の晩餐」(猫入り)を描いています。そちらはまたの機会に。

Borgo Ognissanti, 42.
tel.055-239.87.00
ギルランダイオの「最後の晩餐」は
月・火・土に公開(水・木・金と日祭日は非公開)。9:00-12:00。
写真、ビデオ撮影可/フラッシュ禁止。


オニサンテイ教会は9:00-12:00, 15:00-18:3

 この記事は旧カテゴリー【フレスコ画の世界】から新カテゴリー【1400年代/ Quattrocento】に移動しました。

フィレンツェの最後の晩餐の過去の記事です。

その1改訂版⇩

http://arte.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10-7

サンタポッローニア修道院食堂の「最後の晩餐」(1450)

アンドレア・デル・カスターニョ

Andrea del Castagno(1423-1457)

 Cenacolo(l'Ultima Cena) di Santa Apollonia

Museo del Cenacolo di Sant'Apolloni
Il convento di S. Apollonia
Via XXVII Aprile 1, Firenze

その2改訂⇩

http://arte.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10-8

サン・サルヴィ教会サン・ミケーレ修道院の「最後の晩餐」

アンドレア・デル・サルトCenacolo di San Salvi (1519?-1527?)

Museo del Cenacolo di Andrea del Sarto ; Museo diSan Salvi

Cenacolo di Andrea del Sarto

Via San Salvi 16, Firenze, 

その3改訂版⇩

http://arte.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10-9

カルツァ修道院の「最後の晩餐」(1514)

フランチャビージョ(フランチェスコ・ディ・クリストファーノ)

Franciabigio;Francesco di Cristoforo(1482?-1525)

Cenacolo della Calza /Convento della Calza

Piazza della Calza 6, Firenze,

その4改訂⇩

http://arte.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10-10


サンタ・マリア・デル・カルミネ教会の「最後の晩餐」

アレッサンドロ・アッローリAlessandro Allori(1535-1607)

Il Cenacolo di Santa Maria del Carmine (1582)


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