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フィレンツェの最後の晩餐 その5 [1400年代 Quattrocento]


「初詣に行けなかった王子稲荷の代わりに巡礼している」

と始めた「フィレンツェの最後の晩餐」シリーズ。

「その4」で中断していましたが続編です。


でも、その前に…


「街猫2号」発見!! 

立派な尻尾が印象的。田舎では見かけないタイプです。

 






無言で見送る街猫1号。




以上、サービスカットでした。




ここから

「フィレンツェの最後の晩餐 その5」です。



フィレンツェのオニサンティ広場。

中央の白い建物がオニサンテイ教会、新しい我が家から徒歩数分、2番目に近い教会です。ファサードはマッテーオ・ニジェッティ※の作(1637-38)。フィレンツェでは比較的珍しいバロック様式の教会ですが建築当初からフィレンツェ人には悪評だったそうです。独創的な面白いデザインなのですが。

右端の建物はイタリアで最も高級なホテルの一つ、エクセルシオール。

The Westin Excelsior Florence

左端はレンツィ・クアラテジ宮(15世紀、1887年に改装)。






レンツィ・クアラテジ宮…というより現在はフランス文化会館※

として知られています。美しいズグラッフィート※で飾られています。

※Istituto Francese di Firenze

http://www.france-italia.it/index.php?lingua=it&menu=3&citta=Firenze






同じ写真の部分です。ズグラッフィートは〈重ね塗りした着色漆喰の上層を削り落とし下地の漆喰を出して模様を描く〉壁画技法で、特に外壁に適しています。






オニサンティ広場周辺のご紹介を続けます。

エクセルシオールの左側に見えている細長い建物はラ・カーサ・ガッレーリア・ヴィーキ。






ラ・カーサ・ガッレーリア・ヴィーキLa Casa-Galleria Vichi。

http://it.wikipedia.org/wiki/Casa-galleria_Vichi

リバティ様式※を代表する建築家ジョヴァンニ・ミケラッツィ(Giovanni Michelazzi 1879-1920)の作品(1911年)。施主はアルジア・マリナイ・ヴィーキArgia Marinai Vichi。

Borgo Ognissanti 58/r

2階と3階の間のペディメント※を切断して突き合わせたモティーフは、ブオンタレンティのマニエリズモ建築からの引用。






マッテーオ・ニジェッティMatteo Nigetti(1560?70?-1648);ブオンタレンティ※の弟子。後期マニエリズモから初期バロックの建築家。代表作にサン・ガエターノ教会など。




ブオンタレンティBernardo Buontalenti(1536-1608)については以下の記事も参照

「ピッティ宮の休日」

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-02-19




ズグラッフィートsgraffitoについては以下の記事も参照

「アルノルフォ」

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-08-06




リバティ様式=イタリア版アール・ヌーヴォー=とミケラッツィの他の作品については「オステリア・ココトリッポーネ」の記事中でも紹介しています。

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-09-01




ペディメント;切妻屋根の正面の3角形の部分。破風(はふ)。




前置きが長くなっていますが、いよいよ5番目の「最後の晩餐」参拝です。




教会正面の扉の左に「最後の晩餐」の部屋に続く入口があります。

その左はカラビニエーリ(憲兵本部)の入口、間違って入らないように!






入口を入るとすぐ壁画で飾られた回廊です。






その壁画の一部






回廊を抜けて明るい中庭へ。

「最後の晩餐」の部屋は奥、左の入口。






奥に「最後の晩餐」、左右の壁にはシノピア※が展示してあります。




※シノピアsinopia:「シノピア」は褐色の顔料。その顔料で描かれたフレスコ画の下層の下絵も「シノピア」と呼ばれます。修復のため上層のフレスコ画を剥がした後に現れたものです。

「フィレンツェの最後の晩餐 その4」にも写真があります。

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2007-02-09






ギルランダイオDomenico Ghirlandaio(1449-94)

「最後の晩餐」(1480)

Cenacolo di Ognissanti

400 x 880 cm フレスコ画






画面の左側。

誰がユダ?






右側。

テーブルの手前に孤立しているのがユダです。

分かりやすい配置。






中央部分。

17年後に完成するレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に比べると、ぎこちなさは否めないかも知れません。

しかし真摯な人間ドラマが確かに存在するように思えます。






こちらはシノピア。画面左側の下絵です。

写真では分かり難いのですが誠実な線の描写が見事です。






こちらはファサード正面の扉から入る本堂の内部。




左右の壁に2つの有名なフレスコ画があります。



左側のギルランダイオ作「書斎の聖ヒエロニムス」(1480)

184 x 119 cm フレスコ画

ちなみにヒエロニムスHieronymusのイタリア語名はジローラモGirolamo。アパッチ族の酋長ジェロニモGeronimoも同じ。






右側はボッティチェッリの「聖アウグスティヌス」(1480)

Sandro Botticelli(1445-1510)

Sant’Agostino

152 x 112 cm フレスコ画

アウグスティヌスAugustinusは三位一体を定式化したことで知られています。4-5世紀の聖人ですが著書「告白」は1000年後のルネサンスの時代にもさかんに読まれ、ペトラルカなどにも大きな影響を与えています。




当時フィレンツェ随一の人気画家だったギルランダイオは、サン・マルコ修道院にも「最後の晩餐」を描いています。そちらはまたの機会に。




Borgo Ognissanti, 42.

tel.055-239.87.00

ギルランダイオの「最後の晩餐」は

月・火・土に公開(水・木・金と日祭日は非公開)。9:00-12:00。

写真、ビデオ撮影可/フラッシュ禁止。




オニサンテイ教会は

9:00-12:00, 15:00-18:30



オニサンティ教会



 この記事は旧カテゴリー【フレスコ画の世界】から新カテゴリー【1400年代/ Quattrocento】に移動しました。



フィレンツェの最後の晩餐の過去の記事です。

その1

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-10-11

サンタポッローニア修道院食堂の「最後の晩餐」(1450)

アンドレア・デル・カスターニョAndrea del Castagno(1423-1457)

Cenacolo(l'Ultima Cena) di Santa Apollonia

Museo del Cenacolo di Sant'Apolloni

Il convento di S. Apollonia

Via XXVII Aprile 1, Firenze


その2

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2007-01-09

サン・サルヴィ教会サン・ミケーレ修道院の「最後の晩餐」

アンドレア・デル・サルトCenacolo di San Salvi (1519?-1527?)

Museo del Cenacolo di Andrea del Sarto ; Museo diSan Salvi

Cenacolo di Andrea del Sarto

Via San Salvi 16, Firenze, 

 

その3

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2007-01-30-1

カルツァ修道院の「最後の晩餐」(1514)

フランチャビージョ(フランチェスコ・ディ・クリストファーノ)

Franciabigio;Francesco di Cristoforo(1482?-1525)

Cenacolo della Calza /Convento della Calza

Piazza della Calza 6, Firenze,


その4

http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2007-02-09

サンタ・マリア・デル・カルミネ教会の「最後の晩餐」

アレッサンドロ・アッローリAlessandro Allori(1535-1607)

Il Cenacolo di Santa Maria del Carmine (1582)


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コメント 18

neko

街猫に興味津々(爆笑)
赤い屋根によく似合う洋風猫。日向ぼっこかな?

ギルランダイオの「最後の晩餐」ははじめてみました。
by neko (2008-01-17 06:53) 

ぱふ

いつもいつもお勉強させてもらってます~
建築様式ももちょっと覚えようっと。
by ぱふ (2008-01-17 09:21) 

keiko. U.

久しぶりです。最後の晩餐、とても写真がきれいですね。さむくなりました。お元気で!
by keiko. U. (2008-01-17 10:17) 

柴犬陸

王子稲荷の代わりの巡礼なんですね。
最後の晩餐、何度も巡礼したいところです。
plotさんの代わりに、王子稲荷へ行ってこようかな。笑
by 柴犬陸 (2008-01-17 10:29) 

あやっぴぃ

わ~い、街猫2号だ(^0^)
ウチの近所にも、あいまいな長さの毛の猫が出没します。
ユダだけ反対側にいるんですね。
今までの中では比較的穏やかと言うか地味な感じが・・^^;
ヨハネが眠るように寄り添うのが気になるなぁ~。
by あやっぴぃ (2008-01-17 11:28) 

pace

ただ歩き回るより何倍も楽しめるのが凄く素敵です
ちょっとしたマチエールの違いに心ときめきます
by pace (2008-01-17 13:40) 

toraneko-tora

このネコたち・・・・フワフワで気持ちよさそう 触りたくなります
by toraneko-tora (2008-01-17 20:00) 

てんとうむし

ありがとうございます。
初詣まだなんです。
これから巡礼の旅にでかけます。
by てんとうむし (2008-01-17 20:27) 

りゅう

《最後の晩餐》奥が深いですね!
背景のたわわな果実にも深い意味が込められているのでしょうか?
街猫2号の尻尾もとっても気になります!(^_^)/
by りゅう (2008-01-17 22:43) 

TaekoLovesParis

どれも歴史を感じさせるすてきな建物ばかり。。
フィレンツェはいい所ですね~~~。
ボッティチェリが「アウグスティヌス」を描いているのですね。
ヴィーナスや聖母しか見たことがなかったので、男の人の絵は初めてです。
by TaekoLovesParis (2008-01-17 22:56) 

ツカ

大変遅れましたが、
明けましておめでとうございます!
今年も宜しくお願いします!^^

最初のニャンコかわいい~♪(≧▽≦)

最後の晩餐のユダ、影が一番濃い
一番右の人かと思いました(笑)
by ツカ (2008-01-18 00:54) 

にこちゃん

いいなぁーー 
フィレンツェ市内ゆっくり建物観て歩きたいですー(´ω`。)
by にこちゃん (2008-01-19 13:28) 

mompeli

いつか「最後の晩餐」を訪れる旅がしてみたいです~~☆
by mompeli (2008-01-20 23:12) 

kotobuki1946

フランス文化会館の模様は漆喰を加工したものですか。細かいだけでなく、
これだけの面を全く同じ様に加工する技術は素晴しいですね。
本当のプロの世界を感じさせます。
岩本さんはご存じと思いますが、西伊豆南部に江戸時代の漆喰絵師 長八の博物館があります。  紹介記事は下記。 
http://www.at-s.com/bin/yell/yellow.asp?id=C397275916&filename=shizuhaku.html
by kotobuki1946 (2008-01-20 23:30) 

とらion

今度最後の晩餐に挑戦?!
身の程知らず
ですが、その時は参考にさせていただきます。
by とらion (2008-01-26 20:17) 

Bijoux

わーぃ。にゃんこのサービスカットー♪
最後の晩餐にも色々あるんですねぇ^^
by Bijoux (2008-01-28 00:05) 

Inatimy

テーブルクロスの模様や、背景の植物に興味津々です♪
by Inatimy (2008-01-29 07:20) 

旅爺さん

今日は~!当地の今朝はうっすら雪化粧でした・・・・サブ!
エジプトでも最後の晩餐の絵を見ました・・がまるで違う配置のでした。
ブログ仲間のみどさんが歌の勉強でフェレンツェに行ってます、逢ったかな?。
by 旅爺さん (2008-01-29 13:37) 

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